研究概要 |
申請時において、「PDH法によるFP共振器制御の信号は、その線型信号領域が共振線幅に限定され、非常に狭い」という常識を打ち破り、その共振線幅の10倍以上広い領域にわたる線型信号が、同じPDH法における、変調周波数や復調位相の適切な選択(Near Q-Pahse Demodulation (NQD)とOdd Harmonic Demodulation (OHD)と命名)で実現できるという新事実を理論的に導いていた。この信号取得解析では、重力波望遠鏡で実際に発生している現象、つまり、鏡が速度を持って移動していることにより、反射するレーザー光の周波数がドップラーシフトを起こし、結果、復調信号にいわゆるビートという乱れた成分が発生することで、信号の線形性が容易に乱れる効果を考慮していなかった。今年度は、この効果を考慮したうえで、NQDとOHDを計算しなおしたところ、NQDとOHDで得られるPDH信号は、通常の方法で取得されたPDH信号よりも、(1)より鏡の速度に鈍感になり、ビートによる信号の線形性の乱れが小さい、(2)通常の方法で得られたPDH信号では、鏡の速度が増加するにつれて、本来、光共振器が共振状態であれば、復調信号がゼロでなくてはならないが、そうならず、オフセット信号が乗る不都合が発生するが、NQD、OHDでは、そのオフセットがより発生しにくい、という、「FP共振器のLock Acquire問題」の解決に都合の良いこの二点の定性的性質が存在することが理論的に発見された。本成果は、申請時の成果と合わせて、"Expansion of linear range of Pound-Drever-Hall signal", S.Miyoki, S.Telada and T.Uchiyama, Applied Optics, 28 (2010) pp5217-5225という査読論文として発表された。
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