研究課題/領域番号 |
22540306
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三代木 伸二 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (20302680)
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研究分担者 |
寺田 聡一 産業技術総合研究所, 長さ標準研究室, 研究員 (30357545)
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キーワード | FP共振器 / 重力波 / Pound-Drever-Hall法 / 長基線 / Near Q-Phase Demodulation / Odd Harmonic Demodulation |
研究概要 |
本研究提案段階では、鏡が固定された、「固定Fabry-Perot(FP)共振器」を利用した原理実証実験までは行い、理論予測通りのPDH信号が得られることを確認していた。本計画前年度(計画初年度)は、実際のレーザー干渉計型重力波望遠鏡のように、振り子状に懸架された鏡で構成される基線長の長いFP共振器においてPDH信号に現れる乱れ(いわゆるビート信号)も考慮した理論的考察を行い、本提案手法(PDH法におけるNQD,OHD手法)が「共振器の共振導入制御の困難化の回避」に貢献できるさらなる利点を発見した。本年度は、さらに、実際のレーザー干渉計型重力波望遠鏡で使用される状態を想定した実証実験を行うべく、東大宇宙線研究所が所有する低温レーザー干渉計の構成要素である、基線長10mのMode-Cleaner(MC)光共振器(フィネス1500程度)を利用し、FP共振器の構成鏡が激しく振動する状態で得られるNQDによるPDH信号と、その理論的予測信号波形の比較を行うとともに、実際に、故意に鏡を激しく揺らした状態で、普通のPDH信号を利用した時と、NQDによるPDH信号の場合の共振制御導入成功率の比較を行う準備実験を行った。 結果、PDH信号にビート信号が現れていても、NQDを利用すれば、理論的予測通り、共振付近におけるビート信号の現れ方が弱まることが確認された。さらに、MCを構成する鏡を、約10um/sec以上の速度で故意に揺動し、激しくビート信号が混入するNQDによるPDH信号状態でも、それを利用した共振器共振制御導入成功確率は、一般的なPDH信号の場合の成功率に比べ圧倒的に高いことが定性的に示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度の研究で、今まで考慮されていなかった「PDH信号の乱れ(ビート現象)」においても、本提案のNQD,OHDによるPDH信号の利点が確認されたことは、予想外に好ましい結果である。さらに、本年度の実験では、振り子状に懸架された共振器という設定だけでなく、実際に、その構成鏡が激しく揺動し、PDH信号が激しく乱れても、本計画提案のNQDによるPDH信号を利用することで、共振器の共振制御成功率が劇的に向上することが「定性的」に確認され、これも予想を超える成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今回の共振器制御は、レーザーの周波数を制御し、かつ、制御帯域が700kHzと高い。今後は、より実際に近い状況を再現するため、基線長100mの低温レーザー干渉計CLIOを利用し光の滞在時間をMCの20倍に増大させ、制御帯域が1kHz程度になった場合のふるまいや、制御の成功・失敗に関する判定の基準を明確化し、その統計的解析を行うために必要となる膨大な試行の自動化などを行い、本提案手法の有効性の数値化行っていく予定である。
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