本研究は、次世代重力波望遠鏡の光学的構成要素である、フィネス1500程度の長さ3~4キロメートルという、非常に長い光滞在時間を持つFabry-Perot共振器を、Pound-Drever-Hall 法によって得た線型信号を利用し、かつ構成する鏡に直接に力を加えて位置制御することで共振制御する際の、その非共振状態から共振状態への導入自体の困難さ(Lock Acquire 問題)の克服を、同じPound-Drever-Hall 法に基づきながら、既知の常識的な変調周波数設定・復調位相を全く違う条件に設定するなどにより、そのLock Acquire問題の原因の一つであると考えられる「線型信号領域の狭さ」を大幅に拡大することで目指す新しい手法を理論的に考案したので、それを実証し、Lock Acquire問題を改善し、Lock Acquire共通基盤技術を世界の重力波研究分野に提供する。 本年最終年度は、基線長100 m の低温レーザー干渉計CLIOを利用することで、前年に利用したMCに比べて光の滞在時間を20倍に増大させた、よりkmスケール重力波望遠鏡に近い条件でのNQD信号の振る舞いを調べた。まずは、CLIOの光学的条件を用い、NQD、OHD信号の振る舞いをシミュレートし予想波形を得た。次に、NQD信号を得るため、MCを通過させ、かつ100mFP共振器のFSRの中点近傍に来るように設定した通常の変調周波数である15.804MHzの二倍の周波数31.608MHzで変調を行うことで、MCも通過させ、かつ100mFP共振器の共振近傍にこの変調周波数がたつようにした。この周波数を利用した変復調系により、信号のS/Nが悪い状態ではあるが、予想に近いNQD信号が得られることが検証できた。さらに鏡が大きく動くことによるビートの出現も、このNQDで低減できることが判明した。
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