歯科医学においてはフッ素が口腔内に存在すると蝕抑制があると言われ、従来からフッ化物の歯面塗布、フッ素入り歯磨剤、フッ素徐放性歯科材料の応用等が行われ、多くの臨床例が得られている。その中で歯質はフッ素が取り込まれると耐酸性が向上することがわかってきた。 これまでに我々は、若狭湾エネルギー研究センターで使用可能であるマイクロ陽子ビームとフッ素原子核散乱からのガンマ線を測定することで、大気中で試料内のフッ素の分布測定法を確立するに至った。陽子との衝突の後、フッ素がアルファ線とガンマ線を放出し酸素に変わる原子核反応である。しかしながらビーム軸方向への陽子の浸透によるフッ素分布の不定性はいまだ残っている。本研究では散乱時放出されるα線を測定面側で検出することで、深さ方向に対する制限をかけた測定方法の開発を行う。 実験には若狭湾エネルギー研究センター、放射線研究棟、元素分析コースを用いている。タンデム加速器から取り出された陽子ビームを標的直前の4極電磁石で幅10μm以下のマイクロビームに絞り込む。そのビームを試料に照射し、ガンマ線(エネルギー6~7MeV)を計測する。ガンマ線検出には3インチ角の高効率BGO検出器を用いている。走査電極に印加する電圧を変化させることによって、試料に照射する位置を変えることができる。本研究は測定面側に検出器(SSD)を設置して、ガンマ線と同時にα線を捕え、その反応が比較的表面近くで起こったことを知る。 平成24年8月14日に行った測定の結果の解析を行い、3.4 MeVのマイクロ陽子ビームに対するフッ素からのガンマ線に対するα線収量を0.4%と見積もった。歯質の測定を行うにはビーム量増強などα線収量を増やす必要があると結論した。
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