研究概要 |
結晶に電子線を入射したときに生じるチャネリング放射や,コヒーレント制動放射は,高エネルギー電子線を電磁シャワーによる陽電子生成に適した10MeV程度の光子に効率よく変換することができる。これを用いると,高強度陽電子源の妨げとなっている陽電子生成中の熱負荷を軽減できる可能性があり,線形加速器などに必要な高強度陽電子源を構築できる可能性がある。 この方式による陽電子源構築の可能性を明らかにするためには,複合標的システムによる陽電子生成量と標的中の熱負荷の系統的な研究が必要である。 以上の目的のため,平成23年度は 1KEKB入射器において行った陽電子生成実験のデータを解析し生成量の定量的な評価を行う.そのために,実験装置の検出効率を見積もるためのシミュレーションを行う。 2平成22年度に成功した温度測定装置を改良し,陽電子生成標的における陽電子生成時の温度上昇と温度分布を測定する装置を作製することを目標とした。 1について実験装置の配置をプログラムし基本的な構成を再現できることを確認した。本装置の評価には高統計のシミュレーションデータが必要なため,そのための作業が進行している。 2については,東日本大震災による影響のため,KEKB入射器が低エネルギーのみ可能であった。そのため,低エネルギーに最適化した温度測定の試作器を作製し装置の試験を行った。その結果とおりの温度測定が可能なことを確認した。本測定を平成24年度中に行う予定である。
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