2008年6月に日米欧の協力により打ち上げられたフェルミ(Fermi)ガンマ線宇宙望遠鏡は、GeV領域天体ガンマ線の観測を継続的に行っている。本研究では、2009年9月から解析ソフトウェアとともに公開されているFermi衛星LAT検出器の観測データを用いて、高エネルギー天体のうち、X線連星・超新星残骸・パルサー星雲など、銀河系内高エネルギー天体に着目して解析を行うとともに、電波からX線、及びTeVガンマ線に至る観測データを総合し、ガンマ線を生成する放射メカニズムの解明を目指し、粒子が高エネルギーまで加速される条件と環境を探る。 X線連星・超新星残骸・パルサー星雲をリストアップし、Fermi衛星LAT検出器の公開データを天体ごとに取得し、解析ツールを利用してガンマ線信号を解析し、広域放射エネルギー分布(SED)を作成し、理論モデル計算と比較し、加速粒子や加速環境などについての情報を得て、天体における粒子加速の条件や環境を統計的に明らかにしていく。 平成22年度はフェルミ衛星の解析環境を整えるとともに、大学院生などの協力も得て、X線連星、スターバースト銀河やガンマ線バースト、活動銀河核、超新星残骸、新星、木星などについて解析を行った。特に、本年度の本研究の主題であるX線連星については、PSR1259-63/SS2883に対し2010年12月の近星点通過後に有意なガンマ線信号をとらえ、また4個の天体については上限値を与えた。これらを含むいくつかの結果については、日本物理学会と日本天文学会の年次大会、および2011年のFermi Symposiumと宇宙線国際会議で発表した。
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