研究概要 |
J-PARCニュートリノビームラインのターゲット上流の陽子ビーム近傍の運転時放射線測定を行った。ここにはビームの2次元的な位置をスピルごとにモニターするOT(Optical Transition Radiation Monitor)が設置されており、この測定器の寿命や交換時期を的確に判断するために詳しい運転時空間放射線量の測定が欠かせないからである。 ビーム期間中にγ線を測定するためのアラニン線量計(アミノグレイ)、および中性子を測定するための6種類の金属箔(アルミ、銅、チタン、金、ニッケル、テフロン)を設置した。2012年4月から2012年6月まで約1.37x10 pot(proton on target)の陽子ビーム運転の後、両方の試料を取り出した。 アミノグレイは電子スピン共鳴(ESR,Electron Spin Resonance)を用いて測定した。2本のアミノグレイに照射されたγ線の空間放射線量はそれぞれ26Svと27Svであった。これを我々の目標ビーム強度である750kW連続ビームに換算すると107mSv/hである。一方、陽子ビームからの放射線に関するモンテカルロシミュレーションプログラムMARSを用いてOTRの位置における空間放射線量の値は70mSv/hである。計算値はアミノグレイを用いた測定値を十分再現しているといえる。70mSv/hの空間放射線量に十分耐えるように設計されているOTRは、十分な放射線耐性を備えていることが確認された。 6種類の金属箔を用いた中性子による空間放射線量の測定結果は、KEKの放射線グループによりスペクトロメーターを用いて測定中であり、近いうちに結果を得る予定である。
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