研究課題/領域番号 |
22540327
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
村上 修一 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (30282685)
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 表面状態 / 輸送現象 / 熱電変換 |
研究概要 |
トポロジカル絶縁体の界面・表面状態に関する新規物性現象の探索を引き続き行った。トポロジカル絶縁体はバルクが絶縁体だが表面は金属的となっている特異な物質相であり、その表面状態は、他の物質系では実現しえない特異なエネルギー分散を持っていることが知られている。 まず、異なるトポロジカル絶縁体を2種類接合したときの界面を考えると、通常は2種のトポロジカル絶縁体に由来する表面状態の混成により界面状態はギャップが開いて絶縁的になると考えられているが、本年度の研究で必ずしもそうではない場合があることが分った。トポロジカル絶縁体の表面状態はディラックコーンと呼ばれる特徴的なエネルギー分散を持ち、それぞれの状態のスピンの向きはカイラリティを持つ。そのカイラリティが異符号のもの同士を接合すると、かならず界面状態がギャップレス(金属的)に残ることが分かった。有効模型を用いた考察と、トポロジカル不変量を用いた議論を用いてこうした結果を示した。この界面状態は一般にディラックコーンが偶数個の集まりになり、'結晶の対称性により例えば2個、6個などになる。これらはグラフェン同様の谷の自由度とみなせて、"valleytronics"への応用が期待される。 また、トポロジカル絶縁体などのスピン軌道相互作用系におけるスピントルクについて、スピン軌道相互作用が空間的に一様でない場合にスピントルクが誘起される現象を理論的に計算した。たとえばゲートが試料の一部にのみかかっている場合などは、ゲート電圧によるラシュバスピン軌道相互作用も場所依存性が生まれる。その非一様性からスピントルクが誘起される様子を計算した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トポロジカル絶縁体界面状態については、速度の符号が逆のものの界面でギャップレス状態が現れるなど、当初の目的になく予想していなかったような、興味深い理論的予言をすることができた。これについては物質探索やモデル計算などさらに発展していく余地があり、今後の発展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今までに知られているトポロジカル絶縁体は、表面のディラックコーンの速度の符号(カイラリティ)が全て同一である。今年度の研究成果であるギャップレス界面状態の予言を確かめるためには、カイラリティが逆のものを発見する必要がある。Rashba相互作用を持つ金属表面状態では逆のものが存在することが示されており、これをヒントに物質探索を進める。
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