研究課題/領域番号 |
22540328
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
高河原 俊秀 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (00111469)
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キーワード | スピンエレクトロニクス / 量子エレクトロニクス / 量子コンピュータ / 量子ドット / 物性理論 |
研究概要 |
少数電子・単一原子核スピン結合系のダイナミクスを調べた。具体的には、核スピンの初期化のアルゴリズムを考案した。Si:Pやダイアモンド中のNVセンターでは、光励起による核スピンの初期化が試みられているが、100%の完全偏極には到っていない。核スピンの偏極過程においては、電子と原子核スピンのゼーマンエネルギーの大きな差を如何にして克服するかが鍵となる。ここでは、ドナー束縛励起子を中間状態とする高速でかつ完全な偏極をもたらす光学的方法を考案した。ドナー束縛励起子には三重項と一重項状態がある。まず基底状態である一重項状態を経由する光学過程により、ドナー電子のスピン偏極が可能であることを示した。次に三重項基底状態を光励起し、それがエネルギー的に近い一重項状態に遷移する時に、超微細相互作用によりドナーの核スピンをフリップさせる機構が有効であることがわかった。一重項状態に遷移した後の励起子の緩和にはフォノンの関与が必要だが、この緩和は極めて速く、三重項状態への逆戻りは無視できる。即ち、一方向性の非熱平衡型偏極過程になっている。従って、このスピン偏極したドナー電子から三重項基底状態励起子への光励起を繰り返し行えば、核スピンの完全偏極を実現できる。ドナー束縛励起子は電子2個、正孔1個、固定原子核からなる多粒子系であり、その励起状態も含めた固有状態の全貌は実験的にも、理論的にも未開拓である。そこで、この全貌を明らかにすべく新しい計算方法を開発した。昨年度までは全角運動量がOの状態を扱ってきたが、核スピン偏極においては、全角運動量がOでない状態も重要な寄与をすることが明らかになった。そこで、それらの状態を計算する方法を定式化し、一般化した計算プログラムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算アルゴリズムの考案と効率的なプログラムの開発に多大の時間をかけたので、核スピンに関する新しい物理の探索が少し遅れているが、次年度に鋭意推進したい。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、束縛励起子の固有状態の全貌を明らかにする計算を完成させ、核スピンに関する新しい物理の探索を推進する。
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