研究課題/領域番号 |
22540329
|
研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
吉岡 英生 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 准教授 (40252225)
|
研究分担者 |
林 正彦 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (60301040)
神田 晶申 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30281637)
|
キーワード | メゾスコピック系 / ナノ材料 / グラフェン / グラフェンナノリボン / 超伝導近接効果 / ジョセフソン電流 / 輸送特性 / 一次元電子系 |
研究概要 |
平成23年度は、平成22年度に引き続き、グラフェンにおける超伝導近接効果やグラフェンナノリボン接合系の輸送特性の研究を行った。また、類似物質である低次元分子性導体やカーボンナノチューブに関する研究や、一般的な一次元電子系の基礎研究にも着手した。 1.ジグザグ端を有するグラフェンナノリボン(以下、ジグザグGNRと省略)が二つの正常金、属で挟まれた接合系では、ジグザグGNRの足の数Nの偶奇によってその輸送特性が定性的に異なるなど、多くの異常な輸送特性を示すことが知られている。そのような性質に対するジグザグ端の効果を調べるために、ジグザグ端における電荷移動が他のボンドとは異なる値をとる場合について考察を行った。ジグザグ端のみからなるN=2の場合を除き、得られた結果は電荷移動が一様な場合と同じであった。この結果はジグザグ端が異常な電気伝導特性に寄与していないことを示唆していると考えられる。 2.超伝導-グラフェン-超伝導接合系を流れるジョセフソン電流に関する理論的考察を行った。グラフェンの状態密度はエネルギーの絶対値|E|に比例するため、フェルミエネルギーE=0で状態密度がゼロになる。通常の金属には見られないこのような状態密度のエネルギー依存性が超伝導近接効果にどのような形で反映されるかを調べるため、化学ポテンシャルμ(これはキャリアの注入に対応する)を導入して、ジョセフソン電流の考察を行った。μ=0の場合には、ジョセフソン電流は温度を下げると減少するが、μの値を0からずらした場合には温度を下げると徐々に増加する通常の振る舞いにもどっていくことわかった。その間の領域ではリエントラント的な振る舞いをする。 3.アニオンとカチオンの構成比が不整合となっている分子性導体(MDT-TS)(AuI_2)_xにおいて見出されている金属絶縁体転移を理論的に考察した。規則的に整列しているアニオンからのポテンシャルを考慮して、電子間相互作用とアニオンポテンシャルの関数として相図を完成させた。また、多バンド一次元電子系の状態密度D(E)∝|E|^αを計算し、指数αに対するフェルミ速度の違いの効果を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は正常金属-グラフェンナノリボン-正常金属接合系の輸送特性と、グラフェンを介した超伝導接合を流れるジョセフソン電流に関する研究を行う計画であったが、これらに関しては、平成22年度、23年度に遂行した研究で期待通りの成果が得られたと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
ジグザグ端を有するグラフェンナノリボンでは、電子間相互作用を考慮しそれを平均場近似を用いて取り扱うと、一方のジグザグ端でスピンが一方向に整列し、それが他端とは反対向きになっているという反強磁性状態が実現することが知られている。このような磁気秩序が正常金属-グラフェンナノリボン-正常金属接合系の輸送特性にどのような効果を与えるかに関して考察を行う。また、グラフェンに導入された歪みと電子状態の間の関係に関して系統的な研究を行い、両者の間の関係を明らかにし、グラフェンデバイス作成の指針を探る。
|