Ag系の超イオン伝導ガラスのイオン拡散チャンネルの形成が、液相におけるAgイオンの協同拡散現象に起因することを明確にするため、Ag-(GeSe_3)系とAgI-AgPO_3系の種々の組成の超イオン伝導ガラスを作成し、ガラス相および溶融相において、X線回折測定とAg、Ge、Seの各K-吸収端におけるEXAFS測定をPohang加速器実験所の3C2及び3C1ビームラインを用いて実施した。また、すでに先行研究により、これらのガラス系ではAgイオンの中距離構造揺らぎの存在、さらにもう少し大きなドメインのミクロ相分離の存在が示唆されているので、SPring-8のBL04B2ビームラインのイメージングプレートを用いたX線小角散乱測定を実施し、より大きな構造相関を調べた。これらの新規に得られた構造データと既知の高エネルギーX線回折および中性子回折データを同時にフィットするような構造モデルを、逆モンテカルロ(Reverse Monte Carlo)法を用いたPCシミュレーションにより構築することを試みているが、H22年度には、Ag-GeSe_3系の比較的相分離ドメインの小さなガラス相の1組成に対して、構造実験データを十分再現する構造モデルを得ることに成功した。この構造モデルをベースにして、今後、異なる温度や溶融相の構造に関するモデルを得て、Agイオンの中距離構造揺らぎの生成過程の可視化を進める。 また、溶融相におけるAgイオンの協同拡散に起因する中距離構造をAg濃度の関数として得るため、AgI-RbI溶融塩混合系、AgCl-RbCl溶融塩混合系について高エネルギーX線回折測定をSPring-8のBL04B2ビームラインの大型二軸回折計を利用して実施した。これらの液体の構造因子にランダム物質の中距離相関の指標と考えられているFSDP(first sharp diffraction peak)が存在し、組成により相関の特徴的な長さを連続的に変化させることを見出した。
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