研究概要 |
代表者の理論的研究では、現代版k・p法を用いて、Siバルクバンドに対する歪みの効果を研究し、歪みを加えると伝導帯底が移動し、間接バンドギャップの大きさが著しく変化することが分かった。これらの変化は、帯間光学間接遷移に大きな影響を与える。来年度は、擬ポテンシャルを用いた第一原理計算により、これらの結果をより定量的に検証し、現代版k・p法の有効性と限界を把握する。また.k・p法によるサブバンド計算に歪みの効果を組み込む方法を用いて、Si(001)表面ホールサブバンド(HSB)に対する歪みの効果を調べ、以前研究したSi(111)表面とは歪みの効果が異なることが分かった。キャリア伝導で重要となる第1HSBに注目し、例えば1軸性圧縮歪みを加えると、Si(001)表面では歪みの方向と垂直な方向での有効質量が低下するのに対し、Si(111)表面では、歪みの方向と平行な方向での有効質量が低下する。この有効質量の低下は、ホール移動度の向上に寄与する。来年度は、面方位により歪みの効果が異なる原因を明らかにする。本研究を補強するものとして、Si表面の金属シリサイド層の電子励起を解析した。Si(001)微傾斜表面に形成された1単位格子厚さのDyシリサイドナノワイヤーについて、幅28A,40Aの2種類のワイヤーのうち、幅の広い方のみが金属的であり、1次元プラズモンに寄与することが分かった。 分担者の実験的研究では.Si(110)表面上に鉛を吸着させp型反転層を作製することに成功し、この反転層中のサブバンドの特異な光電子強度の変調を見出した。また、無歪み及び2軸引っ張り歪み印加のSi(001)のバルクバンド分散を測定し、面内に軽い有効質量を持つホールバンドと重いホールバンドの「点での縮退の様子が、歪みの有無で異なることを明らかにした。今後は、n型反転層にて2軸歪みの歪み量を変えた実験及び1軸歪みによるバンドの変化を測定する実験を行う。
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