研究概要 |
Ag-In-Yb準結晶に対する実験的研究が物質材料研究機構の実験グループにより進められている。そこで得られた実験結果に対して理論面から電子論的解釈を与え、新たな実験の指針を提供する為に、Ag-In-Yb系に対して以下の研究を行った。1. 1/1近似結晶の(001)面の電子状態と安定構造を、スラブ模型に対する第一原理電子構造計算に基づき調べた。表面緩和について、In原子が表面層に残りAg原子が内部にもぐりこむ傾向が確認された。またSTM観察では試料にかけるバイアス電圧の正負により、占有・非占有の電子状態の情報を得ることが出来ると期待されるが、電子構造計算の結果からこの様子をシミュレートした。実際の観測結果と比較すると、表面の構造モデルとしてまだ不十分な可能性もあり、今後の課題としたい。2.Ag-In-Yb準結晶へのPb/Sbの吸着実験により、吸着サイトのモデルが提案されている。準結晶構造模型から切り出した5回対称クラスター模型にPb/Sbを吸着した系の電子状態を計算し、吸着エネルギーの比較から最適な吸着サイトを理論的に予想し、実験から提案されたモデルの妥当性を検討した。その結果、吸着の初期過程で問題となるような単原子吸着の場合は、最安定なサイトとして実験的に提案された吸着サイトが得られ、実験的な予想の裏付けを得た。しかしながら、最安定なサイトにすでにPb/Sbが吸着して以降の吸着サイトの予想は実験との一致が得られず、クラスター模型の構造やAg, Inの配置などを再検討している。
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