研究課題/領域番号 |
22540335
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
石井 靖 中央大学, 理工学部, 教授 (60143541)
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研究期間 (年度) |
2010-10-20 – 2015-03-31
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キーワード | 表面・界面 / 準結晶 |
研究概要 |
Ag-In-Yb準結晶に対する実験的研究が物質材料研究機構の実験グループにより進められている。そこで得られた実験結果に対して理論面から電子論的解釈を与え、新たな実験の指針を提供する為に、Ag-In-Yb系に対して以下の研究を行った。(1)1/1近似結晶の(001)面の電子状態と安定構造に対する知見を得るために、第一原理電子構造計算に基づく「simulated cleavage」の方法によりへき開構造を調べた。このシミュレーションでは結晶を一方向に伸ばした構造を初期構造として、各原子に作用する力が無視できるほど小さくなるところまで原子位置を緩和し、安定な表面構造を得る。その結果、表面に原子レベルの凹凸をもつ構造が得られ、実験結果を概ね再現する走査トンネル顕微鏡のシミュレーション像を得た。その後,初期構造のわずかな違いによって少し異なるへき開面が現れることが確認され,実験で見られる様々なテラスの構造との対応を検討している。(2)Ag-In-Yb準結晶へのPb/Sbの吸着実験により、吸着サイトのモデルが提案されている。準結晶構造模型から切り出した5回対称クラスター模型にPb/Sbを吸着した系の電子状態を計算し、吸着エネルギーの比較から最適な吸着サイトを理論的に予想し、実験から提案されたモデルの妥当性を検討した。吸着の初期過程から、第2層,第3層の吸着過程に至るまで,実験をほぼ説明できる吸着のシナリオを理論的に得ることが出来、速報誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ag-In-Yb 1/1近似結晶の(001)面の表面については、へき開のシミュレーションにより構造模型を複数提案していること、準結晶表面への吸着構造については、実験的に提案されたモデルをほぼ裏付ける結果を得て、吸着のシナリオの裏付けを与えたことなど,着実に研究成果が上がっていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2つのテーマに関して、以下の方針で研究を進める。 ・Ag-In-Yb 1/1近似結晶の(001)面の電子状態と安定構造:シミュレーションで得られた構造が異なる劈開面に対して,その相対的な安定性を検討する。また電子構造の詳しい解析により、表面緩和や、特定の元素が表面に多く分布する傾向などを電子論の立場から考察する。さらに、YbをGdなどの他の希土類元素で置換した系との違いを同様の方法でシミュレートし,実験との比較を試みる。 ・Ag-In-Yb準結晶表面へのPb/Sb吸着の電子構造:Ag-In-Yb準結晶へのPb/Sbの吸着表面の電子構造を詳しく解析して、走査型トンネル顕微鏡像のシミュレーションなどを通して、より詳細な実験との比較を行うための情報を提供する。
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