Ag-In-Yb準結晶に対す実験的研究が物質材料研究機構の実験グループにより進められている。そこで得られた実験結果に対して理論面から電子論的解釈を与え、新たな実験の指針を提供する為に、Ag-In-Yb系に対して以下の研究を行った。1/1近似結晶の(001)面の電子状態と安定構造に対する知見を得るために、第一原理電子構造計算に基づく「simulated cleavage」の方法により表面構造を調べた。このシミュレーションでは結晶を一方向に伸ばした構造を初期構造として、各原子に作用する力が無視できるほど小さくなるところまで原子位置を緩和し、安定な表面構造を得る。その結果、劈開の過程によっていくつかの表面構造が得られる可能性が示唆された。表面原子の脱離エネルギーの見積もりにより、それらの構造の安定性を確認したが、シミュレーションで得られた劈開面から原子が直ちに脱離した方が安定となるような傾向は見られなかった。実験的に得られているいくつかのテラス構造との対応を検討して、論文としてまとめるべく準備を進めている。
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