研究課題/領域番号 |
22540338
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
張 紀久夫 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 名誉教授 (60013489)
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研究分担者 |
大淵 泰司 電気通信大学, 電気通信学部, 准教授 (10201980)
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キーワード | 微視的応答理論 / 部分的巨視化 / 内殻共鳴回折 / 禁制回折過程 / 左右回り水晶 / キラル対称 / split-ring共振器 / 長波長近似 |
研究概要 |
(1)キラル対称系に対する内殻共鳴X線回折の第一原理理論として内殻遷移のE1および(M1,E2)成分が混じった行列要素で表現されることがわかったが、水晶の場合に実験を解析するにためにはE1-E2およびE1-M1の寄与の重みを知る必要があり、最初の試みとしてどちらか一方だけでどこまで実験結果が再現できるかを試している。(2)ミクロとマクロの応答が混じった問題を広く扱うのに有効な電磁グリーン関数を任意形状物質について数値的に求める際に難題であったメッシュ点間のテンソル型相互作用の扱いをすべての点の対に共通の座標系で表現する方法が見出され、計算プログラムに乗る形になった。これを用いてローマのDAndrea博士等たちとの共同研究でこの方法の応用を開発してゆくが、当面金属棒の応答計算で精度を検証することを始めた。この方法がうまく働くことが分かれば、(3)で扱っているsplit-ring共振器の応答計算にも有効に使うことができると考えられる。(4)分担者は引き続き、split-ring共振器周期系の電磁場の分散関係の数値解析を行った。前年度は比較的厚い構造を仮定してバンド計算を行い、非常に強い分散を持ったバンドを見出したが、解析が困難なほど極めて複雑な分散関係が得られたため、今年度は2次元の周期500nmに対し厚さ20nmの構造を仮定して、散乱行列法を用いて解析を行った。今回はBrillouin zoneの端のあたりでやや分散が見られるだけで、文献に見られる反射率の大きなspectrum幅は金の誘電関数の減衰率(0.1eV)によるものであることが分かった。また、平行して複素数場に対応したFD-TD法のcodeの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個々の問題についてモデル系の計算としてはそれぞれ数値計算プログラムに乗る形にまできている。その計算結果の中から、微視的応答の部分的巨視化という観点でうまく記述できるようなモデル系を確定してゆくことが今後の課題である。水晶の内殻共鳴回折については実験解析なのでモデル系の扱いだけでは不十分であるが、もともと第一原理の電子状態計算を行うという問題設定ではないので、定性的にE1-E2の寄与かE1-M1の寄与かが分かるだけでも微視的応答の部分的巨視化で記述する電磁応答というごの研究課題の趣旨は満たされる。
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今後の研究の推進方策 |
個々の課題の数値計算を着実に実行し、その結果を物理的に解釈できるようにすることに尽きる。数値計算であるからモデル設定が重要であるが、その良し悪しについてはこれまでの経験に依存するほか、当研究グループ内での相互討論で議論してゆく。
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