この研究計画の基礎になっている「第一原理から導出した巨視的マクスウェル方程式」には従来の巨視的マクスウェル方程式とは基本的に異なる点があるが、その中心的な問題である単一感受率理論という特質について、Landau-Lifshitz の理論をはじめとするいくつかの他の理論形式を比較をしたChipouline等の議論には不完全さと不十分さがあることを指摘して、代表者の理論形式が最も自然な変数(電流密度)による唯一の進化した(感受率を量子論的に厳密に与えた)形式であることを示し、異なる理論形式の間の変換方法や共通な分散方程式等を具体的に与えた。 任意形状をした媒質の電磁応答の計算において分極の非共鳴成分を背景感受率として定数に近似し、それを電磁場に繰り込んだグリーン関数によって共鳴分極を正しく扱うという進化した非局所応答理論については、グリーン関数の数値計算法を確立することが肝要であるが、離散双極子近似(DDA)を超える扱いの中で縦電場を経由する電磁場の伝播に関して当初用いていた式に問題点が見つかり、現在その訂正はできているものの数値的データの蓄積はまだ不十分である。引き続き数値的な計算と簡単な微細構造に対して得られている実験結果との比較を行う。 split ring共振器(SSR)の集合系が一様な巨視系として記述できるかどうかについては、SSRの周期的配列と相互作用する電磁場の系に対して固有モードを計算してきたが、昨年度までにSSRが基板上に寝た形の構造ではほとんど分散が無いことが分かった。今年度はSSRが基板に対して立っている構造について調べ、ほとんど分散の無いバンドに加えて強い分散を持つバンドを見出した。この計算には予想以上にCPU時間がかかり、解析手法も含めて更なる検討が必要であることが分かった。
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