研究課題
強磁場下の混合原子価CeおよびYb化合物に対して、L端X線吸収スペクトル(XAS)の磁気円二色性(XMCD)の理論を大幅に進展させた。不純物アンダーソン模型に外部磁場を印加し、4f-5d電子間の交換相互作用を導入することにより、強磁場下でXMCDを理論計算できる体系を開発し、この系の基本的性質を研究する一方で、具体的な実験結果の理論解析にこの系を応用した。基本的性質としてはXMCDスペクトルの積分強度と磁化の関係、L_2・L_3間のXMCD強度比と基底状態波動関数の関係を初めて明らかにした。また、結晶場効果、混合原子価効果と磁気ゼーマン効果の競合によるXMCDの形状変化を一般的立場から議論した。具体的な実験との関連については、最近、40Tまでのパルス磁場を用いてYbInCu_4のYbL_<23>端XASとXMCDの測定がおこなわれているが、その結果をこの理論系によって解析した。磁場誘起価数転移を不純物アンダーソン模型の範囲内で記述するための工夫をおこない、実験と計算の結果の比較により、実験結果の意味づけをおこなった。特に、強磁場で、YbL_2端のXMCDが負の値をとる現象は異常なものと位置づけられ、その原因について、結晶場効果や5dスピン分極効果に基づいた考察を進めている。以上の希土類L端XMCDの研究と平行して、M端のXMCDの研究にも着手し、強磁場下のYbInCu_4のYb M端XASとXMCDの理論予測をおこなった。さらに、ごく最近の注目すべき実験として、EuNi_2(Si_<0.18>Ge_<0.82>)_2のEu M_<4,5>端のXASとXMCDがパルス磁場下で観測されたので、実験研究者と協力してその理論解析を始めた。現在、研究は順調に進展しており、近いうちに大きな成果を期待している。
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