研究課題
硬X線と軟X線のX線吸収磁気円二色性(XMCD)理論のそれぞれにおいて、大きな成果が得られた。硬X線に対しては、松田らによって観測されたYbAgCu4のYb-L3端XMCDの磁場依存性を理論解析し、既にYbInCu4において解析したものと同様な電気双極子遷移(ED)によるXMCDの他に、電気四重極子遷移(EQ)によるXMCDを新たに見出した。EDによるXMCD強度は磁場と共に単調に増加するが、EQによるXMCD強度は一旦増加した後、磁場誘起価数転移を越える磁場で減少することを明らかにした。さらに、YbInCu4ではこれまでにEQのXMCDが観測されていない理由も理論的に説明できた。一方、軟X線に対しては、中村らによるEuNi2(Si0.18Ge0.82)2のEu-M4,5端XMCDの実験結果を理論解析し、価数と磁化の磁場依存性を説明することができた。この物質に対しては、これまでに硬X線による実験データがあり、価数と磁化の磁場依存性の振舞いに矛盾が見られたが、今回の軟X線の研究ではこの矛盾点が解消された。今回の理論をさらに発展させ、この物質の温度誘起価数転移に対しても、価数と磁化の温度依存性を理論計算して論文を出版した。以上のXMCD理論の他に、もう一つのテーマである共鳴X線発光の理論においても重要な成果が得られた。これまで、CeFe2のCe-L3端のX線吸収スペクトルが二つのピークをもつ理由として、内殻正孔の効果とCe5dバンド状態密度の効果が提案され、どちらが本質的に重要であるかが未解決の問題として残されていた。今回、Ce-L3端の共鳴X線発光スペクトルを詳しく理論解析することにより、Ce5dバンド効果よりも内殻正孔効果がはるかに重要であることを明確に示すことができ、論争に終止符を打つことができた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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