水の氷の常圧下での秩序化相転移の存在の有無について理論の立場から結論を出すことを目的として、数値シミュレーションを行うことを計画している。22年度は本来ならまずモンテカルロ法の技法の1種である「交換レプリカ法」についてテストを行う予定であったが、国内の理論研究者のプレプリントにおいて強誘電体である秩序化氷(Ice XI)における反電場の重要性の指摘が22年度当初においてあったので、それについて考察した。確かに長距離クーロン相互作用を厳密に適用する限りそのような効果は存在するが、それは電磁気の教科書に載っている通り、サンプルの形状に依存する。またそれだけではなく、ドメイン(分域)の入り方にも依存し、結果的に形状如何により結論が変わるのではという感触得た。この事はこれからのシミュレーションにおける重要な留意点となる。また、モンテカルロ法にアルゴリズムについても検討を始めており、年度当初は交換レプリカ法を想定していたが、複数の専門家との議論を行うことにより「ループアルゴリズム」が有効ではないかという感触を得た。現在、このアプローチに基づきプログラム開発を進めている。また、既にこの計画の前に主要な結果を得ていた回転束縛振動(リブレーション)について本計画の基礎となる結果であるので必要な補足研究(より単純な単位胞による計算の省力化やブリルワンゾーンの対称化、また全モードの可視化など)をこの計画内に組み入れて実行した上で、論文を出版し、また国際会議で発表を行った。
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