本研究の大きな目的は、X線共鳴発光分光(RXES)測定を用いることで、正孔の寿命によるブロードニングを回避し、遷移金属元素間の相関や非占有状態の電子の低エネルギー励起構造などの情報を抽出することである。そのために非局所双極子遷移の存在を検証することが必要不可欠でそれが本年度の達成目標であった。本年度はCuO_4プラケットが2次元的に整列しているLa_2CuO_4と1次元的に整列しているSr_2CuO_3を対象とし、非局所双極子遷移の存在を検証した。その結果、非局所遷移構造はX線入射エネルギーが8.979-8.981keV(Cu-K吸収端のプリエッヂ領域に対応する)の時に現れることが分かった。またそのとき、La_2CuO_4の非局所遷移の強度はSr_2CuO_3のそれより強いことが示された。これは、非局所遷移はCuO_4プラケット間の電荷移動によることを示している。上記結果より、TM-K吸収端のプリエッヂ領域のRXES測定からは非局所的な情報が得られるといってよく、TM-TM間の相互作用、dd混成について情報を硬X線領域において取り出す可能性を示したという点は非常に意義深く重要な結果である。
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