今年度は、昨年度得られたPrOs4Sb12とPrRu4Sb12の混晶系において観測された異常な振舞の原因を検証した。さらに、計画時には予定していなかったが、SmOs4Sb12において理論から予測されていた電子・格子相互作用によってフォノンが電荷揺らぎに直接関与する可能性の検証を行なった。 まず、PrOs4Sb12とPrRu4Sb12の混晶系に関しては、Ru濃度が60%の試料に関してもX線非弾性散乱を行ない、結晶場とフォノンの干渉効果によるX線非弾性散乱スペクトルの異常が極めて限られた濃度域だけで観測されていることを明らかにした。また、計画時には予定していなかったラマン散乱の結果を参照することにより、観測された現象が結晶場とフォノンの結合状態であることを確定的にした。 次に、SmOs4Sb12については、X線吸収実験により報告されていたSm価数の温度変化に関する特性温度付近で電子・格子相互作用の変化を示唆するフォノン・スペクトルの線幅の変化が観測された。これまで、我々はSmOs4Sb12のSm原子に関わるフォノン・モードは基底状態である重い電子的振舞いと密接な関係があると考えていたので、本成果はSmOs4Sb12における重い電子的振舞いの起源について改めて考える契機となった。また、Sm原子に関わるフォノン分散が移行運動量にほとんど依存しないことは以前から明らかとなっていたので、理論により予測されていた電子・格子相互作用を利用した価数揺動現象の存在が証明できた。
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