研究概要 |
スピン・パイエルス転移を示す銅酸化物CuGeO3への原子置換により誘起される反強磁性長距離秩序,およびその主体となるCu原子磁気モーメントの発生位置に関する知見を得ることを目的として,原子置換系CU1-xMgxGeO3(Mg置換系)中のCu核について核四重極共鳴(NQR)および核磁気共鳴(MR)測定を行った。 Cu核NQRスペクトルには,全ての測定組成(x=0.019,0.030,0.045)について,母物質において観測される共鳴線(主線)に加え,共鳴周波数の異なる2本のサブピーク(衛星線)が出現することが判明した。衛星線の強度は置換量xの増加とともに増大することから,Si置換系CuGe1-ySiyGeO3と同様,衛星線は不純物原子であるMgに隣接するCu原子に由来すると考えられる。また,si置換系とは異なり,衛星線の線幅はxの増加とともに増大する。これはSi置換系に比べMg置換系ではCu原子周辺の構造歪みが大きいことを意味している。 x=0.019については併せてCu核NMR測定を行い,主線および二本の衛星線の存在を確認した。さらに,NMRシフトの測定により各Cu原子のスピン磁化率を決定した。その結果,一方の衛星線に対応するCu原子のスピン磁化率は主線に対応するものから大きく変化していることが明らかになった。その温度依存性はSi置換系における衛星線のものとは異なっており,磁気モーメント発生および秩序形成について,Si置換系とMg置換系とで異なる機構が働いている可能性を示唆している。
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