研究課題
発光ダイオード(LED)は交通信号や懐中電灯に使われるなど日々の営みに深く浸透し、省エネルギーの達成と快適な生活の維持を両立させる優れた電子素子である。半導体pn接合で生じる発光という物理現象は、このように極めて身近なものである。最近、発光現象の新たな側面に注目した研究が精力的に行われている。超伝導体を用いたLEDには量子情報操作に不可欠な量子力学的にもつれ合った光子のペアを発生出来ると期待されており、超伝導を担う電子対(クーパー対)がどのような過程で、量子力学的にもつれ合った光子ペアを生成するかを明らかにするのが本研究の目的である。2009年に申請者が報告した理論に基づきクーパー対発光の理論を進展させた。時間に依存する摂動理論を用いて接合から発光するフォトン数の長時間平均を理論的に計算する事が出来る、これは発光強度に対応する。これまでのところ、1次の摂動論の範囲では超伝導の効果が極めて小さい事、2次の摂動論を用いて初めてクーパー対の再結合が記述でき、その発光過程から大きな発光強度が説明できそうな事がわかっている。22年度は更に高次の摂動項の大きさを、見積もった結果3次以上の摂動の高次項が無視できることがわかった。この結果は、連携して研究を進めている実験グループによって見いだされた結果を矛盾なく説明する。さらに実験的には、発行寿命が超伝導転移温度以下で急激に減少する事を見いだし、これまでの研究結果を補強する結果を得ることが出来た。
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Low Temperature Physics
巻: 36 ページ: 915-919
DOI:10.1063/1.3515524
Applied Physics Express
巻: 3 ページ: 054001(1)-054001(3)
Physical Review Letters
巻: 105 ページ: 056402(1)-056402(4)