弱く相互作用するボーズ粒子系におけるボーズ・アインシュタイン凝縮転移を,正常相における「自己無撞着な保存近似」を用いて理論的に考察した。幾つかの近似を採用して,転移温度と転移点近傍の化学ポテンシャルの温度依存性を,弱結合極限で計算した。その結果,多数の近似において,相転移が一次転移となるという結論が得られた。一般に,ボーズ・アインシュタイン凝縮転移は連続転移であると考えられている。しかし,本結果は,その通説に疑問を投げかけ,ボーズ・アインシュタイン凝縮転移の解明に向けた更なる努力が必要であることを示している。 次に,代表者が2009年に構成した「ゴールドストーンの定理と保存則を同時に満たす自己無撞着摂動展開法」を用いて,弱く相互作用するボーズ粒子系の基底状態のエネルギーと凝縮粒子数密度を計算した。この摂動展開によると、自己エネルギーのファインマン図形に,従来見落とされていたボーズ・アインシュタイン凝縮相特有の「可約」な構造が存在することが予言される。この「可約」な寄与が、基底状態エネルギーと凝縮粒子密度についての良く知られた「リー・ファン・ヤン補正」に修正をもたらし,それらの表式が、教科書に載っている従来の表式とは異なるものとなることが明らかになった。この事実は、弱結合のボゴリュボフ理論が正しくない可能性を強く示唆し、ボーズ・アインシュタイン凝縮理論の基礎を再構築する必要性を意味している。
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