研究概要 |
本研究の目的は,ボロンドープダイヤモンド薄膜において,極低温領域まで走査トンネル顕微/分光(STM/STS)測定を行い,金属-絶縁体転移近傍に現れる特異な超伝導,乱れの効果,局在電子状態をナノスケールの観点から明らかにすることである.そのために,本研究課題の初年度である平成22年度は以下の項目について研究を行った. 1.試料作製,表面処理: ボロンドープダイヤモンドの(111)配向のエピタキシャル薄膜を気相成長法により作製した(連携研究者の協力による).実験に用いる試料は,STM装置の試料処理用真空チャンバー内で加熱することによって清浄な表面を準備した. 2.STM/STSによるナノスケール電子分光: 金属-絶縁体転移に近いTcが比較的低めの薄膜を用いて,ゼロ磁場中,T=0.35KにおいてSTM/STS測定を行い,超伝導ギャップを観測するとともに局所状態密度(∝dI/dV)の実空間変化を観測した.その結果,50~100nm程度のスケールで局所状態密度は空間変化することが分かった.この空間変化は試料表面における微細構造とは相関は無く,ボロンドープダイヤモンドにおけるミクロな乱れと関係があると考えられ,酸化物高温超伝導体のナノスケール電子状態との比較を行った(学会発表). 3.強磁場中STM/STS測定の準備: 来年度以降の強磁場におけるSTM/STS測定のために強磁場STM装置の開発を行った(学会発表).
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