研究概要 |
平成23年度は前年度に引き続きボロンドープダイヤモンド薄膜の局所電子状態を明らかにするために極低温・磁場中で走査トンネル顕微/分光(STM/STS)を行う予定であった.しかし,東日本大震災の影響で測定装置の一部に破損が生じたため,装置の復旧作業を行うとともに以下の研究を実施した. 1.STM/STS装置の復旧 震災により超高真空部晶である試料搬送用のロッドに曲がりなどの破損が生じたため,部品の交換と調整を行った.その間,STMを用いない低温・磁場中電気抵抗測定(以下の2.に示す)を中心に実験を行い研究計画に遅れが生じないように実験を行った. 2.磁場中電気抵抗率の測定 平成22年度にSTM/STSを行ったボロンドープダイヤモンド(111)薄膜について,磁場中で電気抵抗率ρ(T,H)測定を行った.温度依存性や磁場依存性から上部臨界磁場H_<c2>(T)を求めるとともに,磁気抵抗の振る舞いを詳細に調べた.その結果,H_<c2>(T)以上の高磁場領域で負の磁気抵抗が観測され,電子局在の存在を示唆する結果が得られた. 3.超伝導エネルギーギャップの観測 平成22年度に行ったSTM/STS測定では局所状態密度の実空間分布が明らかになった,平成23年度はエネルギーギャップの空間変化についても詳細に調べた.その結果,局所状態密度の空間変化に対応してエネルギーギャップも同程度のスケール(~100mm)で空間変化することが分かった.これらの結果は,電子状態は薄膜試料の表面微細構造ではなくバルクに存在する乱れ(ボロンの分布など)の影響を受けていることを示唆している.以上の他に,磁場中のSTM/STS測定結果について,その他の超伝導体との比較を行った(学会発表).
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