研究課題
新奇な磁性や超伝導を示す強相関電子系の対象として5f電子を有するアクチノイド化合物は興味深い物質群であるが、これまでウラン化合物の研究が殆どであった。我々グループはわが国で初めて強放射性のネプツニウム化合物を研究対象とする組織と技術を確立した。ネプツニウムの磁性研究には磁性サイトの内部磁場を直接観測できるNp-237メスバウアー分光が有力であるが、わが国ではその技術が確立していなかった。本研究ではAmO_2酸化物とPd金属の粉末を水素還元雰囲気中で熱処理する結合還元法によりAm-Pd合金を自前で調製し、Am-241線源により高分解能のNp-237メスバウアーを達成することである。プルトニウム酸化物中には、経年でベータ壊変によるAm-241が生成することに着目し、Am-241を含むプルトニウム酸化物を結合還元化法でPdと反応させた。壊変で生成するAm-241でもそのγ線の放射能はメスバウアー分光に十分な強度があり、しかも酸化物状態では3価と4価が混在するのに対し、Pdとの合金では3価のみとなるため、NpO2の吸収体に対して、線幅の狭いシングルピークが得られることを実証した。ただし、プルトニウムからの強いα壊変により合金中でも欠陥が増大し続けるため、プルトニウムを含まない純粋なアメリシウム酸化物AmO2を出発原料とすることが望ましい。そこで本研究では日本原子力研究開発機構のNUCEF施設においてAmO2とPdの結合還元反応を行い、放射能1GBqの合金線源を製造した。東北大金属材料研究所の大洗センターにおいてこのAm-241合金線源を用いたNp-237メスバウアー分光を遂行する意には、様々な許可を得たもとで密閉や輸送をする必要があり、安全に十分配慮して手続きを進めた。
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