研究概要 |
Bi-2201相のSrサイトの一部をCaで置換すると超伝導転移温度がそれまでの30-40K 程度から80K を超えるまでになることを見出した。 試料作製はTSFZ炉を用い単結晶作製を行った。試料の評価はX線回折、磁化測定、抵抗測定によって行った。特にBi2.1Sr1.3Ca0.6CuO6+dの組成から作製した単結晶はゼロ抵抗値による超伝導転移温度が86.5Kを観測した。これらの試料はX線回折測定から単結晶であり、磁化測定による超伝導反磁性の大きさから試料全体が超伝導であることが確認された。また比熱測定では超伝導転移に伴う比熱異常が観測され、その大きさからバルク超伝導であることも確認された。 本研究ではホールをキャリヤーとする銅酸化物高温超伝導体全体に対して、これまで観測され報告されている超伝導転移温度(Tc)と銅―頂点酸素の距離(dA)の関係を46種類以上について調べた。CuO2面の数(n)によってデータを整理した。n=1の系ではLSCO, Bi-2201, Tl-2201, Hg-1201などが良く知られているが、これらのTc最大値はそれぞれの物質のdA値に比例することを見出した。特に本研究で観測されたBi-2201相のTc=86.5Kはこの比例関係に重要な役割を果たしている。同様にn=2の系における銅酸化物高温超伝導体、YBCO, Bi-2212, Tl-2212, Hg-1212等、およびn=3以上の銅酸化物高温超伝導体、Bi-2223, Tl-2223, Hg-1223などにおけるTc最大値とdAの関係を直線で近似したところこれらの直線が一点(dA=2.83 Å,Tc≈140 K)で交わることを発見した。 この関係はすべての銅酸化物高温超伝導体の超伝導転移温度が示す新たな関係式として、その超伝導発現の起源に迫る新たな発見として提案している。
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