研究課題
ホランダイト型結晶構造を持つ遷移金属酸化物A_2M_8O_<16>(A=アルカリ元素等、M=遷移元素)は、その金属絶縁体転移や磁性・電荷軌道秩序化など特異な量子物性で、近年大きな注目を集めている。本研究では、ホランダイト型遷移金属酸化物の特異な電子状態を、第一原理電子状態計算と、自己エネルギー汎関数理論に基づく変分クラスター近似を用いて解明する。特に、(1)第一原理的手法による電子状態計算と有効強相関電子模型の導出、(2)自己エネルギー汎関数理論に基づいた変分クラスター近似の開発と適用、(3)各物質で観測される種々の異常物性の発現機構解明である。これら一連の研究を通して、ホランダイト型遷移金属酸化物の物性物理学に関し総合的な理論研究を展開する。平成22年度は、特に、クロム系ホランダイト型酸化物における金属絶縁体転移の機構について計算を進め、それがハーフメタル強磁性体におけるパイエルス転移であるという新しい提案を行った。この計算結果をもとに、系の低エネルギー電子状態を記述する理論模型の構築を行った。また、ハーフメタル強磁性体のギャップ内電子状態の理論を展開した。さらに、ルテニウム系ホランダイト型酸化物の低エネルギー電子状態が、朝永・ラッティンジャー流体として記述できる擬1次元電気伝導体であることを明らかにした。また、バナジウム系ホランダイト型酸化物の金属絶縁体転移の機構解明目指して計算を進め、軌道状態の特殊性や電子相関効果の重要性を明らかにした。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Journal of Physics : Conference Series
巻: 200 ページ: 012172-1-012172-4
巻: 200 ページ: 012143-1-012143-4