研究課題/領域番号 |
22540366
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 晃人 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80335009)
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キーワード | 分子性導体 / ディラック電子 / 傾斜したコーン / 電子相関 / 強磁場 |
研究概要 |
本研究の主目的は分子性導体のディラック電子系の特性に由来する新物性のメカニズムを解明することである。具体的には伝導面に垂直な強磁場下の非自明な電子状態を解明することをめざす。また、分子性導体のディラック電子は時間・空間反転対称性を破るストライプ電荷・磁気秩序により質量を獲得していると考えられているが、このような場合の質量獲得メカニズムと質量獲得後のディラック電子の性質は未解明であるので、これらの解明をめざす。これにより「結晶中のディラック電子系」の物理の新しい側面を開拓し、より普遍的な知見を得ることをめざす。 本研究計画に沿ったこれまでの研究により、N=0ランダウ状態におけるディラックコーンの傾斜による長距離クーロン相互作用の擬スピン対称性の破れを見出し、これによるXY型バレー分裂の可能性を指摘した。これは実際に分子性導体α-(BEDT-TTF)2I3において田嶋ら(2010)による層間磁気抵抗、鹿野田ら(2011)によるNMRにより観測された。 平成23年度では傾斜したディラックコーンのペアをもつ2次元電子系において、傾斜のない場合には存在しなかった新たなプラズモンを見出した。さらにプラズモンのダンピングに非常に強い異方性があることを見出した。またα-(BEDT-TTF)2I3のストライプ電荷・磁気秩序相においてディラック電子が質量を獲得するメカニズムとその性質を解明した。特にゼロギャップ相との境界近くにおいて圧力を加えると質量を持ったディラック電子対が出現することを理論的に予測した。また類似物質α(BEDT-TTF)2NH4Hg(SCN)4は常圧では金属(超伝導体)だが1軸圧を加えるとディラック電子によるゼロギャップ状態が出現することをバンド計算に基づいて予測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の「強磁場下の非自明な電子状態を解明」および「ディラック電子の質量獲得メカニズムの解明」について一定の成果を得、学術論文として発表することができた。前者については既に実験による検証が行われ、本研究の理論予想とコンシステントな結果が報告されている。また新しいディラック電子物質の可能性を理論的に指摘し、物質探索に責献した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初計画に基づき「強磁場下の非自明な電子状態を解明」および「ディラック電子の質量獲得メカニズムの解明」等の理論研究を進め、「結晶中のディラック電子系」の物理の新しい側面を開拓する。また新規ディラック電子物質の探索を進め、物質開発をサポートする。
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