研究概要 |
本研究の目的は,モット絶縁体Ca_2RuO_4を外場で金属化し,その金属相に現れる新奇量子凝縮状態を探索すること.また,その転移過程の特異性を明らかにし,それらの発現機構の理解を進めることにある.H23年度は,電場と圧力の効果について調べた.さらに,本研究で得た成果などを学校など公共の場で公開,科学リテラシー向上を目指した.そして,最先端の成果を一般に公開する方法と意義について評価した. 1.電場誘起金属転移(スイッチング) Ca_2RuO_4に300Kで,わずかE_c~40V/cmで1%もの大きな体積変化を伴い金属化する.また,既知の絶縁破壊電場に比べても1~2桁も小さい.この現象が局所的なスイッチング現象なのかバルクの金属転移なのかを解明するため, (1)パルス電場で入力熱量を制御し,放射温度計で実際の発熱(温度上昇)を測定した. その結果,このCa_2RuO_4スイッチング現象は温度上昇がなくても起こる.すなわち,ジュール発熱ではない事を実証した. (2)スイッチング現象のサイズ効果を調べた. 最近,抵抗変化型RAMを説明するために,局所的スイッチングモデルが提唱されているが,Ca_2RuO_4スイッチング現象でもこれが成り立つのかを確かめるため,金属化の過程を示す電流-電圧特性のサイズ効果を調べた.その結果,電流-電圧特性は素子の断面積や電極間距離でスケールされ,バルクの金属転移であることが示された. 2.圧力効果 "静圧力下"のモット絶縁体Ca_2RuO_4は0.5GPaので強磁性を基底状態に持つ金属に転移し(2)8GPaまで加圧すると遍歴強磁性が突然消失,超伝導が出現する.今年度は京都大学と共同実験・研究を通して,静水圧に加えて1軸圧力の実験を行い金属化と強磁性の観測に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電場の実験からは,我々の発見したスイッチング現象が,電場誘起のモット転移であるごとが実験的に明らかになりつつある.圧力効果についても,静水圧に加えて1軸圧の実験が進展し,侭次元物質の特長が明らかになりつつある.
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今後の研究の推進方策 |
現在,我々の発見したスイッチング現象の論文をNature関連誌に投稿,誌査読中である.査読者の反論(局所効果の可能性)についても我々の正当性を実験的に証明できた.今後,我々の主張が世間に認められるように,我々の実験の信頼性を上げたい.
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