研究課題/領域番号 |
22540372
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
古川 信夫 青山学院大学, 理工学部, 教授 (00238669)
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研究分担者 |
求 幸年 東京大学, 工学系研究科, 准教授 (40323274)
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キーワード | フラストレーション / 強相関電子系 / 電荷自由度 / 量子ゆらぎ / 伝導現象 |
研究概要 |
幾何学的にフラストレートした格子上の横磁場イジングモデルを考え、量子揺らぎによる長距離秩序の不安定化におけるフラストレーションの効果を、連続時間量子モンテカルロ法を用いて詳細に調べた。モデルとしては、水素結合系である四角酸分子性結晶を念頭に置いて、チェッカーボード格子上の横磁場イジングモデルを考えたが、これは電荷秩序の量子融解を調べるモデルのひとつにもなっている。結果として、長距離秩序が融解する際に、アイスルール的な短距離相関が強く残った中間的な状態が現れることを示し、四角酸に見られる圧力下での中間相との関係を論じた。また、縦磁場まで含めたモデルに対して、低温で生じる長距離秩序への不安定性を調べ、従来quantum order by disorderとして議論されていたものと異なる振舞いを得たこれらは、電荷自由度と同等のイジング自由度系に対する量子揺らぎ及び熱揺らぎの効果に関する新しい知見を与えている。 他にも、フラストレーションのある伝導電子系の研究として、パイロクロア格子上のイジング近藤格子モデルに対してクラスター動的平均場法を用いた研究を行い、従来の近藤効果と異なる新しい電気抵抗極小のメカニズムを明らかにした。これは、フラストレーションによって生じたアイスルール的な短距離相関が輸送特性に与える新しい効果を見出したものとして重要な結果といえる。 また、三角格子ハイゼンベルグ近藤格子モデルに対しても研究を行い、スカラーカイラリティを伴った非共面的な磁気秩序状態が現れるメカニズムを明らかにした。これは、フラストレーションに起因した縮退のもとで、従来知られていなかったフェルミ面効果が発現することを明らかにした点で重要な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画がすべて順調に行っているわけではないが、予想しなかった新しい知見が得られたり、新規の実験結果等との比較がなされたりした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で見いだされたフラストレーションによって生じる局所的なクラスタ構造は、他の多くの模型にも見られるフラストレート系に普遍的な性質と考えられるので、今後はより幅広い範囲でこのような構造形成について探索していく予定である、
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