研究概要 |
以前、我々はSmNiC2において、電気抵抗率の温度依存性に異常が現れる148Kで格子変調が発生し、その格子変調が強磁性転移温度(17.7K)以下で消滅し電気抵抗率が約一桁減少することを見出した。この実験結果は、発生した電荷密度波が強磁性転移と同時に消失するとして理解できる。このような現象はこれまでになく、電荷密度波と磁性の相関による新たな現象といえる。本研究では、反強磁性転移を示すGdNiC2およびTbNiC2に注目し、電荷密度波状態の存在の有無、および、様々な磁気秩序が電荷密度波にどのような異なる影響を与えるのかを明らかにすることを目的とし、低温下や磁場下において電気抵抗率・磁化測定およびX線回折・X線散漫散乱実験をおこなった。その結果、電荷密度波の存在とその前駆現象、不整合-整合相転移の存在、磁場による磁気転移の誘起に伴う電荷密度波の変化が明らかとなった。以上の実験結果を整理したところ、RNiC2(R = Sm, Gd, Tb)における電荷密度波状態は物質間で系統的な性質を示すことがわかった。一方、磁気秩序と電荷密度波の相関は多様であるが、磁気秩序は電荷密度波状態を抑圧する傾向があることがわかった。さらに、放射光を用いたX線磁気散乱実験をおこない、磁気秩序について調べた。入射X線のエネルギーを変化させて測定をおこなった結果、共鳴条件で明瞭な強度の増大が観測された。さらに、散乱X線の偏光を解析することにより磁気散乱であることが確認できた。
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