研究課題/領域番号 |
22540375
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
堂寺 知成 近畿大学, 理工学部, 教授 (30217616)
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キーワード | 準結晶 / 物性理論 / ソフトマター / 高分子 / シミュレーション / コロイド / タイリング / ジャイロイド |
研究概要 |
(1)2011年ノーベル化学賞が受賞理由「準結晶の発見」で、イスラエルのシェヒトマン教授に授与された。研究代表者が発見した「高分子準結晶」はノーベル賞発表の際に選考委員に言及され、その解説文にも論文が引用されている。またノーベル賞の記念論文集には、研究代表者はレビュー「Quasicrystals in Soft Matter」を寄稿している。これらの事実は研究課題の題目にあるソフト準結晶が学問分野に大きなインパクトを持ち、昨年の準結晶分野のノーベル賞の選択にも貢献していることを示している。 (2)さて、研究課題「ソフト準結晶-準結晶の普遍性と新物性の理論的研究」の第一の目的はソフト/ハード物質に関わらぬ準結晶の普遍性を理論的に考察すること、準結晶は特殊なものではなくどこにでもあり得るものであることを示すことであった。結晶形成には引力は必要ではなく、剛体球ポテンシャルで可能であるというAlderらの発見は1957年当時大きな驚きをもたらしたが、本研究では剛体球の外側にステップ状の斥力を付加しただけの単純なハードコア-ソフトシェル模型の計算研究で、昨年12回対称準結晶、本年は10回対称準結晶、18回対称準結晶を発見した。この結果はスケールや物質の特殊性に依存せず、研究の目的通り一般的メカニズムで準結晶ができることを示した重要な成果である。物理学会、高分子学会で公表したほか、アジア準結晶ワークショップ招待講演した。 (3)種々のソフトマターで形成されるジャイロイド共連続相に関連したタイリング構造について研究を行った。その結果、ジャイロイド曲面上の剛体球のアルダー転移を発見し、そのタイリング構造を双曲面上の幾何学として解析した。負曲率曲面上の秩序構造に関する最初の一歩で、大きな成果と言える。種々のソフトマターで実現可能な構造である。また、この分野で世界トップの研究者と交流し情報交換し、国内外ワークショップで招待講演した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
10回、12回、18回ソフトマター準結晶の可能性を簡単なモデルの計算研究で発見し、準結晶は特殊なものではなくどこにでもあり得るものであることを示した。したがって、21世紀の準結晶物理学の新たな潮流を創造するという観点で評価できる。また、副産物として負曲率曲面上の構造形成の計算研究が進展している点も評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進展しているので、最終年度はこれをさらに発展させることを推進方策とする。そのために、国内外の研究集会、国際会議でソフト準結晶の計算研究を広く公表するとともに、興味を持つ実験家に理論予測を確かめる実験の提案をすることも課題である。
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