(1)研究課題「ソフト準結晶-準結晶の普遍性と新物性の理論的研究」の主たる目的はソフト/ハード物質に関わらぬ準結晶の普遍性を理論的に考察すること、準結晶は特殊なものではなくどこにでもあり得るものであることを示すことであった。結晶形成には引力は必要ではなく、剛体球ポテンシャルで可能であるというAlderらの発見は1957年当時大きな驚きをもたらしたが、本研究では剛体球の外側にステップ状の斥力を付加しただけの単純なハードコア-ソフトシェル模型の計算研究で、初年度12回対称準結晶、2年度目10回対称準結晶、18回対称準結晶、最終年度は疑24回対称準結晶を発見した。この結果はスケールや物質の特殊性に依存せず、研究の目的通り一般的メカニズムで準結晶ができることを示した重要な成果である。 (2)研究代表者の主導するソフト準結晶研究が世界的にも大きな話題を呼んだ。2011年ノーベル化学賞がイスラエルのシェヒトマン教授に授与されたが、研究代表者が発見した「高分子準結晶」もノーベル賞発表の際に選考委員に言及され、その解説文にも論文が引用された。またノーベル賞の記念論文集に研究代表者は解説を寄稿している。2012年はノーベル賞を記念した国際会議が複数あり、特にMRSの秋大会で初めてソフト準結晶だけのセッションが企画され、Nature Chemistryのブログ「The Sceptical Chymist」で、研究代表者の講演が取り上げられたことも高い評価を裏付ける:Fall MRS 2012: Quasicrystals go mainstream - 中略 - this subfield is growing rapidly ― it is definitely one to watch. (3)副産物として三重周期極小曲面上のAlder転移の計算研究および規則構造の研究が進展した。
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