研究概要 |
平成17年度~平成19年度に科研費基盤研究(C)「リチウム系化合物超伝導体の探索と物性評価」において空間反転対称性の破れた二つの超伝導体Li_2Pd_3B及びLi_2Pt_3Bを発見したことを報告した。その際、2:3:1の組成比を中心に他の超伝導物質がないか探索を行ったが他に発見できなかった。今回、Li:M:B(あるいはC)=1:1:1(M=Rh,Ir,Co,Ni,Ru)の組成比を中心に探索を行ったところ、T_c~3Kの新超伝導物質Li_xRhB_yを発見した。この物質は0.6<x<2,1<y<2の範囲で安定な立方晶構造をとり、最も高いTcは、x=0.9、y=1.5で、格子状数はa=1.209nmである。現段階の粉末X線回折と電子線回折のデータから、空間群はP2_13 or P4_232のどちらかである。いずれにせよ、Li_2Pd_3B及びLi_2Pt_3Bと同様にinversion symmetryを持たない。この系の代表的な超伝導体Li_<1.2>RhB_<1.5>について磁化カーブと電気抵抗の温度依存性を測定した。それによるとH_<c1>(0)=65.6Oe、H_<c2>(0)=14.2kOeを得た。H_<c2>(0)の値は、T_cもほぼ同じ(約2.5K)のLi_2Pt_3Bの値19.3kOeより若干小さい値である。比熱の飛びと反磁性の大きさをSnと比較するとバルクの超伝導物質であると言える。また、低温比熱の温度依存性は、Li_2Pt_3Bと同様にexponentialに依存せずべき状に比例するようである。これは、超伝導ギャップの対称性にラインノードが存在することを示唆する。
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