| 研究概要 |
本年度は中性子散乱実験に用いることのできるKFe2As2の大型単結晶作製に成功した。Kの取り扱いは非常に難しかったが、ステンレス管を用いることによりKによるるつぼの腐食を防ぐことができ、安定した結晶作製環境を得ることに成功した。また、fluxとしてよく用いられているFeAsは本結晶作製には適さず、不純物を析出することが明らかとなった。その対策としてKAsをfluxとして用い、純良な大型単結晶を得ることに成功した。
作製されたKFe2As2の大型単結晶を用い、中性子非弾性散乱実験を行った。その結果、ホールドープ系の鉄系超伝導体のスピン揺動を世界で初めて観測することに成功した。また、そのピーク構造はインコメンシュレートであることが分かった。電子ドープ系よりもスピン揺動がしぶとく残っており、これがKFe2As2における超伝導の発現に大きく寄与しているものと考えられる。
Ba(Fe,Co)2As2の超音波実験では大きなソフトニングが観測された.これは強い電子-格子相互作用が存在することを示唆しており、軌道揺らぎによる超伝導の発現機構を暗示している。本研究がきっかけとなり、軌道揺らぎに関する研究が非常に活発に行われるようになった。
ペロブスカイト構造をはさんだ鉄系超伝導、Ca4Al2O6-yFe2As2の結晶構造解析を行った。その結果、本物質系でもやはり正四面体のときTcが最高となることがわかり、初期の予想の正しさを裏付ける形となった。
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