研究課題
本研究課題では、スピン密度波型反強磁性を示すCrと鉄系高温超伝導体の母物質のフェルミ面形状を明らかにし、スピン密度波型反強磁性の出現によるフェルミ面不安定化現象を直接的かつ定量的に観察することを目的とする。フェルミ面の観察には、高分解能コンプトン散乱実験を利用したフェルミ面マッピング法を用いる。コンプトン散乱では100keV以上の高エネルギーX線を用いているので、バルクのフェルミ面が得られる。本年度は鉄系高温超伝導体の測定を行った。Ba(Fe_<1-x>Co_x,)_2As_2(x=0.17,0.20,0.25)の3試料について、(001)面内の独立な10結晶方位のコンプトン・プロファイルを測定した。測定温度は室温である。コンプトシ・プロファイルは3次元電子運動量密度を散乱ベクトルと平行な電子運動量軸上に積分投影した1次元電子運動量密度分布を与える。それぞれの試料について、測定した10結晶方位のコンプトン・プロファイルから、直接フーリエ法により、(001)面上に積分投影した2次元電子運動量密度分布を求めた。同物質は2次元性が強いため、(001)面上に積分投影しても電子状態の特徴は保存されている。さらに、Lock-Crisp-West折り畳み法により、k空間電子占有数密度分布を求めた。現在、k空間電子占有数密度分布のCo濃度(x)依存性から、フェルミ面形状の変化と磁気構造の関係を検討している。また、バンド計算も並行して行っている。
2: おおむね順調に進展している
予定通り、鉄系高温超伝導体Ba(Fe1-xCox)2As2(x=0,17,0.20,025)の3試料について、測定と解析が完了している。
概ね計画通りに研究を推進するが、新たな物質として、銅酸化物高温超伝導体LSCOとニッケル酸化物NiOを検討対象に加えることにする。
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Phys.Rev.B
巻: 85 ページ: "115109-1"-"115109-8"
DOI:10.1103/PhysRevB.85.115109
Science
巻: 332 ページ: 698-702