研究概要 |
本研究は、申請者が提案している放物型分散曲線を持つ特異格子系について、不規則性によるアンダーソン局在が最も起こりにくいとされる長波長音響フォノンが特に局在し易くなることを、理論予測に基づいて、大規模な数値実験により検証しようとするものである。 3年次計画の2年度にあたる平成23年度は、初年度に開発された高効率数値計算プログラムを用いて、先ず1次元特異格子系について低振動数音響フォノンのアンダーソン局在を確認して、平成23年秋の日本物理学会(富山)で報告した。さらに2次元特異格子系について、充分長い帯状の準1次元系(帯幅W)の波動の伝達行列の正の最小リャプノフ指数γ(K,ω,W,L=∞)を多数のばね定数K,振動数ω,W,充分大きな長さL1に付きQR法により数値計算した。しかし、残念ながら、2次元系を実現するためのγ(K,ω,W,L=∞)によるWに関するサイズスケーリングの結果は、γ(K,ω,W=∞,L=∞)の値が数値計算の精度の限界を少し超えた10^-5のオーダーであることが明らかになりつつある。その結果、本報告書の時点で、2次元特異ランダム系について、γp-ωpの関係が得られるまでに、至っていない。 最終年度に当たる平成24年度では、2次元系でのγp-ωp関係を明らかにするとともに、3次元系について、2次元系と同様な計算を角柱状の準1次元系(角柱幅S)について行い、この研究の総括につなげたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
数値計算による擬1次元系の波動の減衰率(リャプノブ指数)γ(Kω,W,L=∞)の計算精度は2桁出ているが、W->∞でγの数値が小さくなるために、それに基づく最小乗法によるγ(K,ω,W=∞,L=∞)の計算精度が出せていないため。
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