非平衡条件下での構造形成に関連して、固体の体積収縮による破壊のミクロダイナミクスの研究を行った。固体の体積収縮による破壊は、熱力学的には、減圧にともなう固気共存状態への遷移であり、収縮レートに応じて非平衡度がコントロールできる。今年度は主として2次元系を取り扱い、破壊を調べる試料として、Lennard-Jones相互作用を行う粒子から作った三角格子固体、ガラス状態を実現する二成分フラストレートLennard-Jonesモデル(Kob-Andersenモデル)から構成したアモルファス固体、脆性を示す2成分変形Lennard-Jones相互作用を行う粒子から構成した正方格子固体などを取り扱った。様々なマクロ挙動が違う固体モデルを取り扱うことで、破壊現象における統計力学的普遍性を調べることができる。その結果、形態的な普遍性として、ストレインレートと破壊後の試料にみられる空間的なパターンの特徴的な波数との間に、べき依存性を見いだした。このべきは、ナイーブに予想される音速とストレインレートとの競合から決まる長さスケールのべきとは異なり、非自明な結果である。また破壊が起きるタイムスケールに関して、核生成理論による解析を行った。その結果、時間スケールが非平衡度に依存することが見いだされた。これらの成果は、3月に開かれる日本物理学会で報告する。また非平衡熱輸送に関する基本的な文献調査や考察などを行い次年度に向けての足固めを行っている。
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