研究課題/領域番号 |
22540387
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
湯川 諭 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20292899)
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研究期間 (年度) |
2010-10-20 – 2014-03-31
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キーワード | 非平衡状態 / 構造形成 / 破壊 / 普遍分布関数 |
研究概要 |
非平衡条件下での構造形成と輸送に関連して、平成24年度は熱輸送に付随する結晶粒界の運動を調べた。以前に研究を行った磁性体中の熱輸送に付随する磁壁の運動の結晶中における対応物であり、実験的検証が比較的易しいと思われる。この運動は温度勾配により局所温度が異なることが本質であり、いわゆるSoret効果による運動とは少しメカニズムが異なる。この結晶粒界の運動は、異なる温度の熱活性型ダイナミクスで理解することができることがわかった。この系における結晶粒界の運動の結晶軸依存性、活性自由エネルギーなどを調べ、成果を取りまとめた論文を投稿した。 また、昨年度に引き続き、非平衡構造形成の問題としての破壊の研究を行った。ここでは水と粉の混合ペーストの乾燥時にともなう体積収縮による破壊に注目した。この問題は水の拡散的輸送と関連した系であり、水の拡散的輸送にともない体積が収縮し、応力が蓄積されることで破壊にいたる。このような系のミクロモデルをSPH法を用いてモデル化し、マクロな破壊構造の分布などについて統計力学的な立場から研究を行った。その結果、実験と非常によく似たマクロな破壊パターンを得ることができた。また、その破壊パターンのサイズ分布が、その時刻での平均サイズでスケールすることで、ことなる時刻においてもおなじ普遍的な曲線で示されることがわかり、普遍分布関数の存在が示された。この動的スケーリングに関する普遍分布関数の存在は、実験結果の予備的な解析からも確認された。さらに動的スケーリングが成立する物理的本質は確率過程を用いたモデル化により理解できることがわかった。成果は学会等で発表し、論文としてまとめ投稿した。また、非平衡条件下での構造形成に関連して、鳥の群がなす構造とゆらぎ、応答の関係を研究し、学会等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非平衡条件下での構造形成に関する研究で、予想以上の多彩な成果が出た結果、非平衡輸送に関する研究がやや遅れている。研究課題全体からみると、許容範囲内であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、研究プロジェクトの最終年度であるため、非平衡輸送と物質輸送に関する研究のモデル化、シミュレーション、理論的解析などを重点的に実施する。
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