非平衡条件下での構造形成と輸送に関して、平成25年度は、昨年度に引き続き、構造形成の問題としての破壊の研究を行った。昨年度までに得られた、水の拡散的輸送にともなう体積収縮による破壊にみられる新たな統計法則である動的スケーリング則の物理的理解を目指し、確率過程を用いたモデル化、およびその確率過程をマルコフ化した数理モデルを解析し、動的スケーリングには破片寿命のサイズに関する冪的な依存性が本質である事がわかった。また、破片寿命のサイズが冪的に依存する際の物理的条件を準静的な弾性体モデルにおいて考察した。さらに、この結果を破片の形状依存性などを考慮して拡張した理論を構成した。これらの成果は、随時、学会や研究会、国際ワークショップなどで報告した。この研究においてゆっくりとした破壊の動的な統計的性質が明らかになったことで、産業などへの応用に向けた可能性が広がると思われる。 この成果は、非平衡条件下ので構造形成におけるミクロダイナミクスおよびマクロ記述に関する具体的な成果であり、直接、そのような主題に関する理論的な物理的原理につながるものではないが、凝集過程一般で観測できるVicsek-Family スケーリングの逆過程とも見なすことができ、今後の研究の発展が期待できる。 また、非平衡条件下での構造形成と輸送に関し、一次元周期的交通流の渋滞転移に関する論文を発表した。過去に行った渋滞形成実験の解析を非平衡動力学の観点から共同で行い、渋滞転移の転移密度の見積、および渋滞転移自身の物理的様子を明らかにした。さらに熱輸送と物質輸送の交差関係の研究に関し、状況の整理を行った。
|