テンソル積状態を基底状態として持つ典型的な物理系のひとつにAKLT模型がある。そのハミルトニアンは、局所的な射影演算子の和で表されていて、局所演算子にかかる係数が正値である限り、ハミルトニアンに空間依存性があっても基底状態は常に一様であって不変である。このように、ハミルトニアンが持つ空間的な依存性が基底状態に現れない関係が、より一般的な物理系について成立しないかDMRGを用いた数値計算を通じて探索した。まず、空間依存性を表す係数が指数関数的である場合は並進操作がエネルギースケールの変換に直結しているため、数値計算に頼るまでもなく一様性を証明できる。指数関数の和で表される、双曲線関数が空間依存性を表す場合はどうであろうか?Gapを持ったスピン系について調べてみると、予想された通り基底状態の一様性はハミルトニアンの空間依存性にかかわらず保たれていた。また、準粒子励起は系の中央付近の相互作用が弱い場所から起き、緩やかに束縛された状態を構成することを確認した。空間依存性が正弦的である場合は、予期しないことであったが、基底状態の一様性が保たれるのみならず、基底波動関数が周期境界条件の下で得られるものと完全に一致した。その原因について、まず自由粒子より構成されるフェルミ系で解析的な確認を進めているところである。空間と時間の相補性に着目すれば、これらの成果はハミルトニアンが時間変化する場合の基底状態の変化などに応用できると考えられる。
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