研究課題
ヨウ化錫には熱力学的に安定な二液体状態が存在することを我々は放射光X線その場観察によって明らかにしていた。平成22年度の目標はこの二状態間で相転移が起こることを実験的に明らかにし、それを理論的に記述するためのプロトタイプのモデルを構築することであった。KEK-ARのBL NE5Cに設置された高圧発生装置MAX80を用いて1.5GPa、1000K付近の液体構造の精査を行ったところ、この点近傍で分子スケールの構造の圧力に対する急激な変化を観察することができた。平成21年度にSPring-8 BL22XUで検出した同じ点における密度の僅かであるが急激な変化とあわせて考えると弱い一次転移が起こっていることが確実となった。この結果は平成23年6月までに論文投稿し、8月にスペインで開催されるIUCr2011にて発表する。また、高圧下での液体の安定保持方法については低圧結晶相の状態方程式とともにPhysical Review Bに投稿した。以上の観測結果からポリアモルフィズムの記述には局所構造と大域的状態である密度を秩序変数として同時に含むことが本質的に重要であることが分かる。これらのうち、前者、後者をそれぞれプライマリだと考えるSon-Patashinskiモデル、Franzese-Stanleyモデルを取り上げ、ヨウ化錫の相図を平均場近似で計算した。後者からは1.37GPa付近に第二臨界点が現れる。また、臨界点以上の温度領域で密度の極大領域が現れる。これらについては近々論文発表する予定である。
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Journal of the Physical Society of Japan
巻: 80 ページ: 024003-1-024003-3