研究概要 |
平成24年度計画に沿って研究を遂行し、以下の成果を得た。 【液相間転移の臨界現象】これまでにSon-Patashinski模型とFranzese-Stanley模型を平均場で取り扱い、液相間転移の臨界点を決定してきた。平均場を越えたレベルでの液相間転移の臨界現象を議論する時期に来たといえる。より複雑な計算には、液相間転移を発現せしめる本質的な機構を残したまま、さらに自由度を削減することが望まれる。そこで、これまで提唱されている様々な模型からGirardiら(J. Chem. Phys., 126, 064503 (2007))の模型を計算対象に選んだ。同論文にはMonte Carlo計算結果が報告されている。まずは平均場計算を行い、定性的な相図を得た。 【超高圧下でのヨウ化錫液体多形の探索とその理論的解釈】10 GPa付近でのヨウ化錫液体の構造の放射光X線その場観察を試みた。実験はKEK-ARのNE5Cに設置された高圧発生装置MAX80を用いて行われた。8 GPaをわずかに越えた圧力で液体状態からのX線散乱強度を得ることができた。現在、データの解析を行っているところである。ヨウ化錫の非晶質状態との対応、および超高圧結晶相との関係から、この付近で完全に分子解離した液体が現れると予想している。 【融解現象】固体非晶質化は固体内での融解現象だと考えられる。然るに、融解そのものの機構や固相の熱力学的安定限界については今日なおも完全に理解されてはいない。そこで、理想的なモデル物質である、変形Lennard-Jones系を用いて融解現象そのものの解明に着手した。まずは上述のモデル物質の平衡特性を正確に把握する必要がある。そこで、この系の相図を熱力学積分により決定した自由エネルギーとGibbsアンサンブル法によるシミュレーションから精密に決定した。
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