「分岐構造、階層構造の形成とダイナミクス」という題目で分岐パターンや階層構造の形成原理を深く研究することをめざしている。そのために、簡単化した数理モデルを提案し、その数値シミュレーションを行う。 今年度は沿面放電に生じる分岐パターンの力学モデルのシミュレーションを行い、コンデンサの容量に対応するパラメータを変えていくと、分岐密度が連続的に変化することを見つけた。分岐密度を数量化するためにフラクタル次元を計算した。また、雷の先駆放電にみられるようなステップリーダーの時間的振る舞い、すなわち、放電路が少し進んでいったん停止しまた進むという階段状の進展をしめすパラメータ領域が存在することが分かった。雷の先駆放電のステップリーダーは古くから知られている現象であるが原因はいまだにはっきりしていない。このモデルをもとにさらに数理的にステップリーダーの原因を追究したい。 複雑な分岐構造上のダイナミクスの簡単な例として、インクの紙への浸透の問題の数理モデルのシミュレーションした。紙は紙の繊維が複雑に絡み合った媒質で、インクはその繊維にそって表面張力によって浸透してゆく。ランダム性と浸透性、さらに紙の表面での水分の蒸発が釣り合ったところでインクの浸透界面が止まる。そのとき、ある種の臨界状態が自己組織化され、界面の幅と長さの間にフラクタルの一種であるセルフアフィン性が生じることを示した。
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