分岐構造・階層構造の形成とダイナミクスの研究課題の最終年度としていくつかの分岐構造 や階層構造をつくる系の数値計算を行い、その形成機構の解明をめざした。 まず、スケールフリーネットワーク構造をもつ電力網を構築し、その上で大規模停電がおこるようすをシミュレーションした。電力網のダイナミクスを記述するモデルとして、フィードバック項をもつ位相モデルを考案し、数値計算を行った。シミュレーションの結果、要求される電力が大きくなると、発電所の出力限界を越えて周波数が標準値からずれてくるステップアウトが連鎖的に起こり、大規模停電に至る様子が確認できた。この大規模停電が生じる転移点を解析的に求めた。 一方、分岐構造をつくる結晶構造にデンドライト(樹枝状結晶)がある。樹枝状結晶では界面の不安定性により多数の横枝が発生する。これまでフェイズフィールドモデルを用いた3次元デンドライトのシミュレーションの例はあったが、フェイズフィールドモデルでは表面張力項のため、比較的なめらかな形ができ、多数の横枝がフラクタル的に出現する様子が計算できていなかった。今回、結合写像格子モデルを用いて3次元シミュレーションを行い、そのフラクタル次元の値を初めて求めた。結合写像格子モデルでは表面張力を0にすることができるので微細なフラクタル構造が出現したと考えられる。また、横枝の長さ分布がべき乗則に従うことも数値計算で確認した。 さらにもうひとつのテーマとして、多数の渦点系の数値計算を行い、エネルギーが低いときには渦格子状態にあったものが、エネルギーを上げるにつれ、周方向に広がった層構造になり、さらにエネルギーを上げると、動径方向にも一様な液体状態へ転移することを見つけた。結晶から液体への融解現象の1種と解釈できる。
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