研究概要 |
(1)我々が用いる第一原理LDA+Uハミルトニアンの交換相互作用パラメーターがconstraint LDA法(c-LDA)とconstraint RPA法(c-RPA)の間で30%異なってくるという新しい事実が最近になって報告されたので,非局所理論の構築に取りかかる前にこれらの値の違いがFe,Co,Niの磁性にどのような影響を及ぼすかについて調べる必要が出てきた.そこで第1原理動的CPAを用いてこれらの遷移金属の有限温度磁性を調べた.その結果,c-RPAの値は低温側の磁化や状態密度を改善するが,高温側の帯磁率やキュリー温度はc-LDAの値の方がより妥当な結果を与えることがわかった.特に,Niではc-RPAから得られた交換相互作用パラメーターは磁化とキュリー温度の両方を過小評価する(JPSJ 80,034706(2011);PRB 83,144409(2011)). (2)第一原理運動量依存変分理論へ向けた変分波動関数の改良を行い,U_>0およびU->∞の両極限で正しい結果を与える新しいハイブリッド法を発展させた(JPSJ80,114708(2011);日本物理学会2011秋).その結果,この理論が両極限で従来のGutzwiller波動関数を改良するのみならず,これまでGutzwiller波動関数では表現できなかった低エネルギー領域の運動量分布関数のエネルギー依存性を正しく記述できることがわかった. (3)有限温度非局所電子相関理論の前段として,静的近似内での非局所分子動力学理論を発展させた.(研究協力者:野原翔太(修士論文)).そして,3次元fcc格子上のハバードモデルに対して理論を適用し,電子数1.2以上で強磁性が出現することを確かめた.
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今後の研究の推進方策 |
多少の遅延が予想されるが,当初の研究計画通り,非対角有効媒質を用いた第1原理非局所電子相関理論が可能なので,その完成へ向けて研究を進める.ただし,計画に遅れが生じているので,具体的な数値計算はある程度限定せざるを得ない.
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