研究概要 |
固有値や固有空間の新奇な量子ホロノミー(全のアンホロノミーとも呼ばれる)とは、量子系の固有値や固有空間が、パラメータに対して多価性を帯びる現象のことである。本研究の目的は、新奇なホロノミーの物理学における意義を明らかにすることであるが、本年度の成果として以下を得た。 1. 量子回路を階層的に接合した模型について、位相および固有空間のゲージ不変量を調べた。非対角幾何学位相については単純な結果を得た。一方で、この模型のパラメーターが一般的な値を取る場合、置換行列を求めるには、subset-sum と呼ばれる NP完全問題の解が必要であることを示した。この意味で、複雑な anholonomy を持つ例題を得たことになる。 2. 既存の、新奇な量子ホロノミーを示す量子写像は階数 1の摂動を何らかの意味で必要とする。このため、ヒルベルト空間の次元を変える毎に、模型を交換する必要がある。この意味で、新奇な量子ホロノミーの量子古典対応を論じることは困難であった。これに対して、昨年度に得た、新奇な量子ホロノミーの発見論的な条件を利用した模型の探索を通じて、量子古典対応を自然に論じることができる例を見いだした。 3. 一次元ボース系は、その結合強度を変化させることで、自由ボゾン系、Tonks-Girardeau系、super Tonks-Girardeau系、自由ボゾン系の順番に閉じた径路を構成することができる。これが新奇な量子ホロノミーを誘発することを示した。さらに、二体ボーズの場合について、加藤の例外点との関連を調べた (Yonezawa, Tanaka, and Cheon, arXiv:1304.5041 参照)。
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